できたてホヤホヤのイベント画像を大公開!(文章はゲーム内にて使用されているものです)
弥彦は答える代わりに、自分の額を僕の額に重ねた。
「うーん、さっきよりは……下がったかな」
もう一度タオルを固く絞り上げ、額にそっと置き直す。
「つめた……」
「はあ。気持ちいい」
「薬、飲めますか?」
「ううん、もうちょっとあとで…………」
「ねえ、弥彦」
「はい」
「これで……僕、すぐには家に帰らないですんだかなあ」
「なに言ってんですか」
僕の頬に冷たい手を当てて、弥彦は苦笑いをする。
「まったく、無茶ばかりするんだから。さ、お休みなさい」
「……………………」
「……なんで、なん……で…………………………」
銀色の髪が炎を映してオレンジ色に光る。
ちょっとだけからかうように僕を見下ろす、見慣れた青い瞳。
「なんで、ここに、いるんだよ………………っ……」
涙のせいで、目の前が滲んで見えない。
嬉しさと哀しさと不安と、すべてが混ざり合った感情の濁流が、止めどもなく溢れる。
「………………ノエル!」
「…………お前に言いたいことがあった」
ノエルは手の中のものを、ついと持ち上げた。
「いいかい、こんな状況になるまで俺を信じていた君にも落ち度はある」
「君は自分に近づく危険を察知する能力に欠けているな。のほほんとしすぎだ」
「成嶋の2代目として、こんなんじゃ先が案じられる」
「成嶋の、2代目……?」
「先生、どうして…………」
先生の指が下腹部からいちばん敏感な部分へと下りていく。
突然、しかも男の手によってまさぐられ、体が震え、肌は嫌悪感に粟立つ。
「は、離して…………」
「はっ…………はなせーっ!」
腕を振り回そうと体をねじった瞬間、肩を捕まれ、思いきり机の上に叩きつけられた。
「じゃあ、ジーンズを脱げ」
「え!?」
「ジーンズを脱げと言ったんだ。お前、首筋に露骨に傷を残す気か?」
「で、でも、ジーンズって……」
「大腿部内側の血管から吸うんだよ。
この時期、常に服に覆われて隠れる場所といったら足がいい」
「大腿……内もも…………っていってもさ……だからって人前で
脱げるかよ…………」
「彰人、お前そっちの趣味でもあるのか」
「『そっち』?」
「男同士での」
「い、いきなり何言うんだよ! ないってば、そんなの」
「じゃあ恥ずかしがることはない。早くしろ」
「カミーユが帰ってくる前に済ませたいだろ?」
なかば楽しんでいるようなノエルの顔には、薄く笑いが浮かんでいる。
「あーーーーーーーっ!!」
「さっきから、何度ゆすいでも泡が出ると思ったら…………」
「高木、いつまで人にシャンプーかけてんだよ!!?」
「ばれた? きひひ、結構わかんないもんだな」
「あ、ばか、僕のシャンプー、丸々1本使いやがって!」
「じゃあ、俺のリンス、丸々1本使う?」
「ふざけろ!!」
僕が投げたシャンプーの空ボトルは高木に当たらずに、むなしく壁にぶつかり跳ね返った。
「あんまり風呂で暴れると、のぼせてぶっ倒れるよー」
「ふ、まだまだ、ガキだな」
「冷てえなあ。じゃあいいよ。おい、彰人君、君、付き合え」
「いいですけど、僕、飲めませんよ?」
「なんだ、普段弥彦と飲まんのか」
「弥彦、うちじゃあ全然。たまに夕食時にビール1缶くらいとか、一人で寝酒を飲んでるくらいかな」
「ふうん」
ちろ、と弥彦に目をやる。
「……お前、すっかり主婦業が身に付いちまって」
「萩原さん……話があったんじゃないんですか」
「おお、そうだ」
-----------------------------------------
弥彦の部屋で、何やら話し込む探偵、萩原。
弥彦が難しそうな顔をしているのは、この町に起きている事件に関係があることなのか、それとも彰人の身の回りに……。
「水をまくのか」
「雑草抜いて土が砕かれたから。風が吹いたら埃すごいよ」
僕は空に向かって、勢いよく水を捲いた。
出口を押さえられ、水は細かい粒となって大気に降り注ぐ。
「わあーっ、冷たくて気持ちいいや」
水道管がだいぶいかれているのか、突然水の出が強くなったり細くなったり。
水圧で跳ねるホースをはしゃいで振り回す僕の手に、ノエルが笑いながら後ろから手を添えた。
「わぁああっっ!!!!」
「な、成嶋君、なによ、急に?」
「どうか、しましたか?」
「い……いえ…………」
僕は倒れた椅子を元に戻して、うつむいたまま座り直した。
真由子が覗き込みながら、小声で気遣う。
「……ねえねえ、成嶋君、顔色悪いよ。大丈夫?」
「う、うん」
僕は頷くだけで精一杯だった。
きっと、気のせいだ。
顔を上げてもう一度見たら。
そうすれば僕の思い違いだとわかるに違いない。
-----------------------------------------
奇しくも男と英会話学校で再会した彰人。
ノエル・シドーと名乗る講師とあの紅い眼の男は、本当に良く似ていた。